抜け毛や薄毛の原因は様々であり、甲状腺機能の異常以外にも、AGA(男性型脱毛症)、円形脱毛症、あるいは生活習慣の乱れなど、多くの要因が考えられます。自分の薄毛が甲状腺疾患によるものなのか、それとも他の原因なのか、見分けるためのポイントはあるのでしょうか。まず、脱毛の「パターン」に注目してみましょう。甲状腺機能亢進症・低下症のいずれの場合も、脱毛は頭部全体の髪が均等に薄くなる「びまん性脱毛」の形をとることが多いです。一方、男性のAGAでは、前頭部の生え際(M字部分)や頭頂部(O字部分)といった特定の部位から薄毛が進行していくパターンが典型的です。円形脱毛症では、境界明瞭な円形または楕円形の脱毛斑が突然現れます。この脱毛パターンの違いは、鑑別の一つの手がかりとなります。次に、「髪質の変化」も参考になります。甲状腺機能亢進症では、髪が細く柔らかくなる傾向があります。甲状腺機能低下症では、髪が乾燥してパサつき、もろく切れやすくなる傾向が見られます。AGAでは、軟毛化(細く短い毛が増える)が特徴です。円形脱毛症では、脱毛斑以外の髪質は正常なことが多いですが、活動期には特徴的な切れ毛が見られることがあります。さらに重要なのが、「全身症状の有無」です。甲状腺疾患による脱毛は、多くの場合、脱毛以外の全身症状(動悸、体重変化、倦怠感、むくみ、寒がり・暑がりなど)を伴います。もし、抜け毛とともにこれらの症状がある場合は、甲状腺疾患の可能性が高まります。AGAや円形脱毛症(軽症の場合)では、通常、このような全身症状は見られません。「発症の仕方や進行速度」も異なります。甲状腺疾患による脱毛は、病状の進行とともに徐々に現れることもあれば、比較的短期間で気づかれることもあります。AGAはゆっくりと進行することが多いです。円形脱毛症は突然発症します。これらのポイントはあくまで目安であり、自己判断は禁物です。特に、びまん性の脱毛は、他の原因(栄養不足、ストレス、薬剤性など)でも起こり得るため、鑑別が難しい場合もあります。正確な診断のためには、必ず医師(皮膚科、内科、内分泌科など)の診察を受け、必要に応じて血液検査などを受けることが不可欠です。