フィナステリドが主に2型5αリダクターゼに作用するのに対し、もう一つの代表的なAGA治療内服薬である「デュタステリド（商品名ザガーロなど）」は、異なる特徴を持っています。デュタステリドは、「1型と2型の両方の5αリダクターゼ」の働きを阻害するように設計された薬剤なのです。この点が、フィナステリドとの最大の違いであり、デュタステリドの作用の強さにもつながっています。1型5αリダクターゼは皮脂腺に、2型5αリダクターゼは毛根や前立腺に主に存在しますが、デュタステリドはその両方の働きを抑制します。これにより、フィナステリド（主に2型のみ阻害）と比較して、体内のDHT濃度をより強力に、かつ広範囲に低下させる効果が期待できます。いくつかの臨床研究では、デュタステリドの方がフィナステリドよりも発毛効果が高い、あるいは毛髪の太さをより改善するという結果も報告されています。これは、デュタステリドが1型と2型の両方を阻害することで、より徹底的にDHTの生成を抑えるためと考えられます。特に、フィナステリド治療で十分な効果が得られなかった方や、より積極的な改善を望む方にとって、デュタステリドは有力な選択肢となり得ます。ただし、両方の酵素を阻害するということは、副作用のリスクにも影響を与える可能性があります。デュタステリドの副作用（性機能関連、肝機能障害など）の発現頻度は、フィナステリドと比較してやや高い傾向にあるというデータもあります。より広範にホルモンバランスに影響を与えるためと考えられます。どちらの薬剤が優れているということではなく、それぞれの特徴（作用する酵素のタイプ、効果の強さ、副作用のリスクなど）を理解し、個々のAGAの進行度や状態、そして患者さんの希望や懸念などを考慮して、医師が最適な薬剤を選択することになります。デュタステリドが1型・2型の両方に作用するという点は、その効果とリスクを考える上で重要なポイントです。