睡眠不足が髪に悪影響を与えるもう一つの大きな理由として、「頭皮の血行不良」が挙げられます。髪の毛が健やかに成長するためには、毛根にある毛母細胞に、血液を通じて十分な栄養素と酸素が届けられる必要があります。いわば、血液は髪の毛の「栄養ドリンク」のようなものです。しかし、睡眠不足の状態が続くと、この大切な血流が滞りやすくなってしまうのです。そのメカニズムには、「自律神経の乱れ」が大きく関わっています。私たちの体は、活動モードの「交感神経」とリラックスモードの「副交感神経」という二つの自律神経がバランスを取りながら機能しています。通常、睡眠中は副交感神経が優位になり、血管が拡張してリラックスした状態になります。これにより、体の隅々まで血液が行き渡りやすくなり、細胞の修復や再生が効率的に行われます。頭皮の毛細血管も同様に、睡眠中に血流が促進され、毛根に栄養が届けられると考えられます。ところが、睡眠不足が続くと、交感神経が優位な状態が長引き、自律神経のバランスが崩れてしまいます。交感神経には血管を収縮させる働きがあるため、頭皮の毛細血管も収縮し、血流が悪くなってしまうのです。血行不良に陥った頭皮では、毛根に必要な栄養素や酸素が十分に供給されません。その結果、毛母細胞の働きが低下し、髪の成長が妨げられたり、ヘアサイクルが乱れて抜け毛が増えたりする原因となります。また、血行不良は頭皮を硬くする原因にもなり、これも髪の成長にとってはマイナス要因です。つまり、睡眠不足は、成長ホルモンの分泌低下だけでなく、自律神経の乱れによる血行不良という側面からも、髪の健康を脅かす可能性があるのです。ぐっすりと眠ることは、体全体の血行を促進し、頭皮環境を整えるためにも不可欠な要素と言えるでしょう。
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