テストステロン値が高いことは、筋肉がつきやすい、エネルギッシュである、性機能が活発であるなど、一般的にポジティブなイメージを持たれがちです。しかし、テストステロン値が「高ければ高いほど良い」というわけではなく、過剰に高い状態や、その影響が強く出ることによる潜在的なリスクやデメリットも指摘されています。まず、精神面・行動面でのリスクです。テストステロンは競争心や攻撃性と関連があるとも言われており、過剰に高い場合、衝動的な行動を取りやすくなったり、攻撃性が増したり、イライラしやすくなったりする可能性が指摘されています。これが人間関係のトラブルや、社会的な問題につながることも考えられます。また、過剰なリスクテイク行動(危険な運転、ギャンブルなど)につながる可能性も示唆されています。次に、身体的な健康リスクです。テストステロン値が高いことと、特定の疾患リスクとの関連も研究されています。例えば、前立腺がんのリスクとの関連については、まだ議論がありますが、注意が必要とされています。また、血液中の赤血球数を増加させる作用があるため、血液が濃くなり、血栓症(血管が詰まる病気)のリスクを高める可能性も指摘されています。さらに、AGA(男性型脱毛症)のリスクです。テストステロン自体ではなく、それが変換されたDHT(ジヒドロテストステロン)がAGAの主な原因ですが、テストステロンの量が多い、あるいはDHTへの変換効率が高い、またはDHTへの感受性が高いといった要素は、AGAを発症・進行させるリスクを高めます。体毛は濃くなるかもしれませんが、頭髪にとってはマイナスに働く可能性があるのです。その他、睡眠時無呼吸症候群との関連や、皮脂分泌の増加によるニキビの悪化なども考えられます。もちろん、これらのリスクは、テストステロン値が高い人すべてに当てはまるわけではありません。また、どの程度のレベルからが「過剰」なのか、明確な基準があるわけでもありません。しかし、テストステロン値が高いことには、メリットだけでなく、潜在的なリスクも存在するということを理解し、バランスの取れた状態を維持することが重要であると言えるでしょう。