抜け毛や薄毛の原因として甲状腺機能の異常が疑われる場合、医療機関ではどのような検査が行われるのでしょうか。正確な診断のためには、いくつかの検査を組み合わせて評価する必要があります。まず、基本となるのが「問診」です。医師が、いつから、どの程度、どのように髪が抜けているのか、脱毛以外の症状(体重の変化、動悸、倦怠感、むくみなど)はないか、既往歴や家族歴、服用中の薬などについて詳しく聞き取ります。これらの情報は、診断の手がかりとして非常に重要です。次に、「視診」と「触診」です。医師が、脱毛のパターンや範囲、頭皮の状態(色、炎症、フケの有無など)、髪質(太さ、乾燥具合など)を目で見て、手で触れて確認します。甲状腺が腫れていないか、首の触診も行われることがあります。そして、甲状腺機能の異常を調べる上で最も重要なのが「血液検査」です。血液検査では、主に以下の項目を測定します。・ 甲状腺ホルモン(FT3, FT4): 血液中の甲状腺ホルモンの量を直接測定します。FT4(遊離サイロキシン)とFT3(遊離トリヨードサイロニン)の値を調べ、亢進症では高く、低下症では低くなります。・ 甲状腺刺激ホルモン(TSH): 脳下垂体から分泌され、甲状腺ホルモンの分泌を調節するホルモンです。甲状腺機能が低下するとTSHは高くなり、逆に亢進するとTSHは抑制されて低くなります。甲状腺機能の異常をスクリーニングする上で非常に重要な指標です。・ 甲状腺自己抗体(TRAb, TPOAb, TgAbなど): 甲状腺疾患の中には、自己免疫(自分の体を攻撃してしまう免疫反応)が原因となるものがあります。バセドウ病ではTRAb(TSH受容体抗体)が、橋本病ではTPOAb(抗サイログロブリン抗体)やTgAb(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)が陽性となることが多く、これらの抗体を測定することで、病気の原因を探る手がかりとなります。これらの血液検査の結果と、問診や診察所見を総合的に判断して、甲状腺機能亢進症や低下症、あるいはその原因となる疾患(バセドウ病、橋本病など)の診断が行われます。薄毛の原因として甲状腺疾患が疑われる場合は、内科、内分泌内科、あるいは皮膚科などでこれらの検査を受けることができます。

カテゴリー: AGA