AGA治療において、薬物療法などで十分な効果が得られない場合や、生え際の後退など、デザイン性が求められる薄毛に対して、最も確実な見た目の改善をもたらすのが「自毛植毛」です。これは、AGAの影響を受けにくい後頭部などから自身の毛髪を毛包ごと採取し、薄毛部分に移植する外科手術です。この自毛植毛の技術も、近年目覚ましい進歩を遂げており、より自然な仕上がりで、患者さんの負担も少ない方法が登場しています。従来から行われている「FUT法（ストリップ法）」は、後頭部の頭皮を帯状に切除して株分けする方法ですが、線状の傷跡が残るというデメリットがありました。これに対し、近年主流となっているのが「FUE法（ダイレクト法）」です。これは、専用の細いパンチを使って毛包を一つずつくり抜いて採取するため、線状の傷跡が残らず、小さな点状の傷跡で済み、術後の痛みやダウンタイムも比較的短いのが特徴です。このFUE法もさらに進化しています。例えば、採取するパンチの径がより細くなり（マイクロFUEなど）、毛根へのダメージを最小限に抑え、より多くの毛髪を採取することが可能になってきています。また、「ロボット支援植毛」も登場しています。医師がロボットアームを操作し、AIによる画像解析技術なども用いながら、より正確かつスピーディーに毛包を採取・移植する技術です。これにより、医師の疲労による精度の低下を防ぎ、生着率（移植した毛が根付く確率）の向上が期待されています。採取だけでなく、「移植技術」も進化しています。単に毛を植えるだけでなく、生え際のラインをいかに自然に見せるか、毛流れや密度、角度などを緻密に計算し、元々生えていたかのような自然な仕上がりを追求する「デザイン性」が重視されています。熟練した医師は、美的センスと高度な技術を駆使して、満足度の高い結果を目指します。自毛植毛は、依然として高額な費用がかかり、外科手術であることのリスクも伴いますが、技術の進歩により、以前よりも負担が少なく、より自然な結果が得られるようになってきています。最終的な選択肢として、その最新動向を知っておくことは有益でしょう。